バスキングのこと。
バスキングって知ってる??
海外では路上パフォーマンスのことをバスキング、それをやる人をバスカーって呼ぶ。
日本でもたまに見かけるけど、私は旅に出るまで別世界の人だと思ってた。
そんな私がどうしてバスキングをすることになったのか。
それは
その日のごはん代を得るため
でした。
旅にもだいぶ慣れてきた頃、タイのカオサンロードで2人のインド人に声をかけられた。
ヘイ!元気?ジャパニーズ?
人と話すのが大好きだから、話しかけられたらとりあえず返す。その日も楽しく会話を始めた。
じゃあ行くね!ありがとう!
立ち去ろうとしたら、1人が両手を広げてハグを求めてきた。海外じゃよくあること、ハグに応じてバイバイした。
楽しかった、良い人だったな〜
と、思ってた。その時は。
シェイクでも飲みに行こうと思って財布を確認する。
、、、ない。
いや財布はある。中身が無い。
そういえばあの時、ハグしてない方は私の右後ろに居た。財布の入ったショルダーバッグがあるところ。やたら長いハグだな、とは思ってた。
やられた。
仲良くなったと思ってたのに、、、
怒りよりも悲しみが込み上げた。旅に慣れてきて危機感を失ってた自分にも腹が立った。
落ち込んでてもしょうがない。とにかく、お金が無いとごはんが食べられない。宿は最悪野宿でも良いとしても、、
ごはんが食べられないしシェイクも飲めない
これは一大事!!!
そんな時、習字で名前を書くバスキングしてる人の話を思い出した。
、、これしかない。
トラブルも楽しまんと!
宿で紙を貰って、でかでかと書いた。
あなたの名前を漢字で書きます。
お代は任せるよ!食べ物でも嬉しい!
紙とマジックを持って、またカオサンロードに戻る。人通りが多いところに差し掛かると、張り切ってた気持ちが一気に萎んだ。
ここに座るの?知らない人に声をかけて?
むりむりむり!!怖い!!!
どこでやろうか考えながら何度も何度も通りを往復するけど、なかなか心は決まらない。
大丈夫、死ぬ訳じゃない。やるって決めたんやもん。
自分に言い聞かせながらやっとかっと場所を決めて、準備を始める。
俯いてても、いろんな目線を感じた。訝しげに見てくる人、興味ありげに伺ってる人、指を指して笑ってる人。とにかく怖かった。準備を進める指が震えた。
笑顔で自分から声をかけなきゃ!分かってるのにうまく笑えなくて、準備が終わってもなかなか前を向けなかった。
そのうち警備員のおじさん数人が近くに寄ってきた。もしかして怒られる…?恐る恐る顔をあげて、引きつった笑顔で挨拶した。おじさん達は、思ってたよりずっと優しい笑顔で返してくれた。
こんにちは。何してるの?
ほっとしながら、説明した。
おじさん達は次々に名前を教えてくれて、書いた紙を渡すと手を叩いて喜んでくれた。
ありがとう!頑張って!
私と握手して、箱にお金を入れてくれた。
あったかくて、嬉しくて、泣きそうになった。
おじさん達のおかげで、周りに人が集まってきた。気づけば緊張もほぐれて、たくさんの人と会話をして名前を書いた。
色んな人が助けてくれた。
近くのマッサージ屋のおばちゃん、トゥクトゥクの運転手、通りすがりのバックパッカー、先輩バスカーさん。
ご飯作ってきてくれたり、暑さを心配して日陰に案内してくれたり、周りに呼びかけてくれたり…
優しさが嬉しくて、喜んでもらえるのが嬉しくて、いつのまにか心から楽しんでた。
この日頂いたお金は550バーツ、約1700円。
お菓子やアイス、ご飯をくれた人もいっぱい居て、お腹も心も満たされた。
長くて短い1日。
お腹いっぱい食べて、ふかふかの布団で横になって。
ぜんぶ、今日助けてくれたみんなのおかげ。
感謝しかなかった。
その後もいろんな国でバスキングをした。
スペインのアリカンテで
その度にたくさんの人と出会って、たくさんの笑顔をもらった。
バスキングは、法的にはグレーゾーン。賛否両論あると思う。
でも、私は心からやって良かったと思ってる。
やらなきゃ分かんなかったから。
見ず知らずの外国人を助けてくれる人がいっぱいいること。
こんなに世界があったかいこと。
安易に勧めるのも違うと思うけど…
絶対世界が変わるから、興味があるならやってみてほしいなって思う。
そんな偉そうなこと言えないけど、ちょっとだけ心の片隅に置いておいてほしいことがある。
お金が目的だったとしても、楽しむ気持ちを忘れないこと。
それから助けてくれた人に感謝の気持ちは絶対忘れないこと。
私もずっと忘れない。
いっぱい貰った優しさを、少しでも返していきたいなって思う。