好きすぎて泣いた日
忘れられない日がある。
間違いなくあの瞬間、世界で一番幸せだったと思う。
2月27日。
ある場所に到着した。頑張って、頑張って、やっとの思いで辿り着いた場所。
嬉しくて走り回りたい気持ちを抑えて、まずは寝床を探す。屋根があって、出来れば風が凌げて、ベンチがあれば最高だなぁ…。
しばらく歩き回り、ちょっと休憩しようと辺りを見渡して、ふと目についてふらっと入った小さなお店。
運命の出会いだった。
知らない国の言葉が飛び交う店内。息を飲んだ。すぐに分かった、この出会いの為にここに来たんだって。
この方。
右下のほう。
きのことフォアグラのリゾット
あまりの感動に、すぐに手をつけられなかった。まずはパンを食べて心を落ち着ける。
それから、私は、スプーンで彼をすくった。
口の中でとろけるフォアグラ
ご飯に絡み合うソース
きのこの香りが鼻に抜ける
頭は真っ白だった。とにかく幸せで、ずっと離れたくなくて、口に含んだまま目に涙が浮かんできた。
間違いなく、この瞬間私は、世界で一番幸せだった。
でも、別れの時は来る。
気付いた時にはお皿は空っぽで、大好きな彼はもうどこにも居なかった。
それでも私は幸せだった。
出会えて良かった。
またここに来よう。何度だって会いに来よう。
スペインのバスク地方、サンセバスチャン。
〜おわり〜